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WLB推進企業レポート掲載!『株式会社ベネッセコーポレーション』 (『大学生の視点』からワークライフバランス推進に取り組む企業を取材!)
2009/02/18
~男女雇用機会均等法が施行される前から女性の活躍を推進してきた株式会社ベネッセコーポレーション。人財部の責任者の方にお話を伺いました~
【企業概要】
| 教育、語学、福祉、暮らしなど、教育や生活に関わる事業 | |
| 1955年 | |
| グループ全体 17,084名、 単体 正社員 2,594名(男性 1,152名 女性1,442名) | |
| 女性管理職比率 | 約37% |
【ワーク・ライフ・バランスを展開する背景】
―貴社が考えるワークライフバランスについて伺っていきます。まず、どのような目的・お考えでワーク・ライフ・バランス(以下WLB)を進めていらっしゃるのでしょうか。
最終的に目指したいのは事業の成長です。それを目指すためのWLBであり、仕事の中、それから地域や社会とのつながりの中で気づきを持ち視野を広げるということが重要です。もっと細かく言うと、地域や社会との接点を持ったり、社会人として生活実感を得るということを一つの目的としています。もう一つ、仕事を含めた人生を充実して、長く元気で活躍し続けられる状態を実現するという目的のためにWLBを進めています。ただ、我が社では、これをWLBとは呼ばないようにしようとしています。
―それはどうしてなのでしょうか。
ワークとライフをマネジメントするという自律した社員がワークライフマネジメント(以下WLM)をすることがWLBであり、WLMの前提であるという考えだからです。
―なるほど。では、WLMに取り組む「きっかけ」は何かあったのでしょうか。
よく聞かれるんですが、WLMをここからやりますというものは特にないと思うんです。WLB、WLMと言っても、両立支援だってそうだし、社員一人一人の働き方を変えるというのもWLMだと思うんです。両立支援という意味でWLMを考えるのであれば、我が社はかなり前から行っています。
―では、そこについてもう少し詳しく教えてください。
男女均等処遇というのは、1970年代から進めてきました。男女雇用機会均等法は1985年に成立したのですが、それよりも前に男女平等で働いてもらっていたんです。WLMができないと、仕事を継続できないと考えているため、1985年あたりから女性社員の定着を目指して色々な制度を入れています。
―そのような施策をすることになったのは経営者のお考えからでしょうか。
男女を平等に採用する、雇用するというような考えは創業社長の方針です。
―女性社員の定着率に関してのお考えはいかがでしたか。
その当時、大卒女性の積極的採用により優秀な人材を確保できたのですが、採用した女性が5~6年後戦力になった時点で、出産・育児により退職するという状況がありました。せっかく採用しても辞めてしまう方が多いので、定着率を高めるためには両立支援施策が重要であるとの考えから多様な制度を導入してきました。
【柔軟な働き方:スーパーフレックス制】
―貴社のホームページを見ていたら色々なWLBの取り組みが掲載されていて驚きました。これらの制度について質問させていただきます。色々な企業でフレックスタイム制は導入されていますが、スーパーフレックス制というのはどのようなものなのでしょうか。
この制度は1995年に導入しています。フレックス制度というのは、例えばコアタイムがあったり、コアタイムがなかったとしても、通常9時出社の場合に11時に出社したら2時間分の労働を1日の中でしなければならないと思います。それが、弊社の場合、1ヶ月の所定労働時間の中で消化すればよいというものです。極端な話、勤務が1日1時間でも良いのです。弊社は7時間勤務ですので、他の日に残りの6時間分を分割して働くことが可能になっています。
―今、どのくらいの方が利用されていらっしゃるのですか。
これは全社員が利用できるので、ほとんどの社員が使っています。
―どうしてこの制度を導入したのですか。
時間の柔軟性アップを目的としているのですが、初めの思想というのは、その当時の社長が人それぞれ集中できる時間はバラバラなはずだと考えていたからなのです。また、生活の場や自己啓発にも通じますが、昼間に学校に行きたかったら学校に行って勉強して、その後出てきてもいいじゃないかというように、勤務時間を柔軟にすることで視野を広げることにもつながると考えられました。
―この制度を導入したことによって、何か変わったことはありますか。
正直な話、導入してすぐは大変なことになりました。というのも、みんな何時に来るのかわからなくなり、出勤時間がバラバラになってしまったということがあったからです。その後、部・セクションによって、たとえば朝ミーティングをもつことを決めたりしながら、柔軟に運用してきました。また、お子さんが熱を出してしまった、役所に寄っていかなければならないときなどは、事前に連絡をして、来る時間を周りに知らせておきましょうということを確認し合いました。
―導入して良かったことはありますか。
子育て社員だけでなく、独身の社員にも役立っています。時間を柔軟に使えるということは良いことだと思います。役所などは平日しか開いていないですが、そういう時に有給休暇や半休を取らずにすみます。夜に仕事をしなければならないのであれば、午前は用事を済ませてからということができるので、トータルとして残業削減にも繋がります。
【カフェテリアプラン】
―では、次にカフェテリアプランについてお聞きします。カフェテリアプランは貴社が日本で一番初めに取り入れられたわけですが、どうしてこの制度を導入しようと考えたのでしょうか。
「自主自律」という当時の人事制度の考えから出てきたものです。一律に会社が何かを提供するだけではなく、自分で主体的に福利厚生も選ぶという発想から作られました。「平等に」「主体的に」が目的にあったと思います。例えば、福利厚生制度として宿泊施設などを持っていても全く使っていない社員もいて、結局は平等ではないという面がありました。そこで、従業員に一律にポイントを付与し、そのポイントの範囲内で子育て中の社員なら子育てのことにポイントが使えるし、独身の社員なら自分のこれからこと、医療費補助やスポーツジムなど、個々人のニーズに合わせてポイントが使えるようになりました。
―福利厚生が様々な分野まで網羅されていますが、特に人気があるというものはありますか。
子育て社員のほとんどが、託児施設の補助を使っています。また、保険の補助もよく使われています。他には、人間ドックを受けたりして追加的にかかった費用を申請している方も多いです。介護に関しては、我が社は若い人が多いので利用者は少ないと思います。
―制度を導入して良かった点はどのような点ですか。
自分の志向にあった福利厚生、補助が受けられるというところだと思います。
【男性の育児休職】
―では、次に男性の育児休職についてお聞きします。男性の育児休職利用者が結構いらっしゃるようですが、どのような施策を行ったからなのでしょうか。
育児休職中の経済的支援を始めたことが一番大きいと思います。
2006年12月に、育児休職のうちの2週間は有給にするという経済的支援を始めました。そうしたら、それまでは1人もいなかった男性の育児休職者が急に増えて、12月から3月までの間に7人が申請をしたんです。次に、有給の期間を2007年度に3週間に伸ばしました。そのきっかけというのは妊娠・出産・子育て事業部が産褥期(さんじょくき)、子どもを産んで床上げをするまでの3週間は夫である男性が休職を取るようにしてほしいという要請があったので3週間に伸ばしました。そうしたところ、3週間以上取得する人が増えました(2007年度に育児休職をした男性社員は全部で12人。そのうち3週間以上が7人)。2008年からは1ヶ月を全部有給にして、2ヶ月目、3ヶ月目は基本給の50%支給に変更したんです。なぜこのようにしたかというと、男性に育児休職がどれくらい取れたらよかったですか?と質問したところ、1ヶ月くらいという答えが多かったからです。上司のほうも1ヶ月がフォローの限界だろうという声があってこのような制度にしました。昨年は、男性の育児取得者が30%くらいだったのですが、今年は既に23人も取っているんです。まだ計算していないですが、おそらく40%の男性社員が育児休職を取っているのではないでしょうか。
―23人もですか!驚きました。また、1ヶ月有給にもビックリです!珍しい取り組みですね。3ヶ月目も基本給の50%支給はとても経済的に嬉しいですし、大黒柱の男性でも取りやすそうな気がします。
そうですね。結果として、1ヶ月以上取る人が多くなってきました。普通は育児休職は無給です。育児休業給付金はハローワークから支払われるんですけど、それだと休業中は30%で、育児休業復帰給付金を合わせても50%で、それだけでは経済的に苦しいということがあります。若い人が多いので、経済的な面が大きいと思うんです。また、我が社は若い人が多いですので、人事からの発信に凄く敏感に反応していただいて、取りやすい風土があるということも一つあると思いますけれども。
―男性の育児休職を広めるために、何かしていることはありますか。
元々、育児休職は女性が普通に取っている会社なのですが、男性も事業貢献の為にも育児休職を是非取りましょうという発信を朝礼などで人事からしています。また、社内広報誌に、毎月男性の育児休職者を載せていったところ、当たり前の雰囲気が醸し出される職場の風土になってきました。
―人事が発信するということは社内全体にかなり理解がもたれているように感じます。上司の方が声かけをすることはやっていますか。
声かけまではいかないかもしれませんが、育休が取りたいんですと相談すれば、いいよと応じてくださっているのだと思います。
―男性が育児休職しやすいように、何か講座を開くなどしていますか。
パパ講座などは特にやっていません。我が社は、妊娠・出産・子育ての事業をしていますので、自社の雑誌(「たまごクラブ」「ひよこクラブ」「こっこクラブ」など)を読んだりしていると思います。社員対象に、お父さんはこうしたほうがいいというようなことはやっていないですね。
―1ヶ月有給というのは女性が取得しても・・・
もちろん、女性が取っても同様の経済的支援が受けられます。
【事業内託児所「たまkid‘sクラブ」】
―では、次に託児所についてお聞きします。自社で託児所を持っているところはなかなか無いので先進的だなと思いました。今はどのくらいの方が利用されていますか。
今は15人くらいですね。ほとんどが0歳児です。
―お子さんが何歳まで利用できるのですか。
就学前までです。
―なぜ託児所を設置されたのでしょうか。
1994年に多摩オフィスができたときに託児所も一緒に作りました。多摩にオフィスを作ったきっかけというのが、「職住接近」という考えからなんです。不要な通勤時間を少なくして、家庭に時間を取れるようにしましょうということが思想としてありました。その中で、お子さんを預けられるような施設を作っていきましょうということが、多摩オフィスを作る際に自然に入ってきたからというのがあります。
―男性でも利用していらっしゃる方はいますか。
はい。あまり多くはないですが、今1人いて今後2人になります。奥様は他の会社の方です。
―設置してみて反響はどうでしたか。
当時は人気でなかなか入れなかったですね。それからだんだん落ち着いてきました。ここ最近、自治体の保育園が入れなくなってきているので、いっぱいになりつつあります。もしかしたら、来年度からはお断りすることも出てくるかもしれません。
【キャリア支援】
―では、育児休業から離れて、キャリア支援についてお聞きします。何か取り組まれていることはありますか。
キャリアカウンセラーを設置しています。社内の者と外部の方とがいます。また、能力開発にも積極的に取り組んでいます。
―能力開発研修が整っているようですが、どのような研修があるのでしょうか。
まず、ビジネスフレーム研修ですが、企業会計やマーケティングの研修などがあります。これは3等級までの社員の必須研修です。コアコンピタンス研修は、当社は雑誌なども扱っていますので編集者研修など業務に必要なスキル獲得に向けて行われているものです。あとは対象者別のマネジメント研修など、様々な研修があります。
―語学など自己啓発の研修もありますか。
語学などに関しては、カフェテリアプランとは別に能力開発ポイント制度というものがあります。この制度は、毎年4月に約100ポイントもらえるんです。1ポイント1000円なので、100ポイントを換算すると100,000円になります。内容は、例えば人事の私だったらWLBの研修や在宅勤務制度導入の研修に出たりします。語学をブラッシュアップしたい人は、このポイントを使って英会話学校に通ったり、通信講座の費用補助にも使うことができます。先ほど出たビジネスフレーム研修などはポイントが要らない研修です。
―皆さん利用していらっしゃいますか。
そうですね。ただ昔は、受けますという証明を出せば、ポイントがもらえたのですが、最近は少し厳しくしています。修了書がないとポイントがもらえません。そのため、始めるけれど、忙しくて修了までできなかった社員などは結構います。
【メンタルヘルス】
―メンタルヘルスに関してはいかがでしょうか。
相談窓口というものがあります。東京本部だけで担当者が4人ほどいます。仕事が上手くいっていない、上司と上手くいっていないというようなモヤモヤとした悩みや体調が悪いなどの悩みはこちらの相談窓口にやってきます。相談窓口といってもコンシェルジェみたいなものです。一次対応の窓口のような感じなので、体調が悪い人などはそこから産業医の面談につないだりしています。
―設置してみて何か反応はありましたか。
コンスタントに相談が入っているそうなので、何か悩んだときに受け皿があるという安心感は出せているのではないかと思います。
―数々の策についてお話をうかがってきましたが、イチ押しは何でしょうか。
私は今、子育てをしているのですが、1番助かったのはスーパーフレックス制です。時間をフレキシブルに使えることが非常に良かったです。あとは育児休職中の有給です。これにより男性の育児休職者が増えました。男性も一回仕事から離れて生活してみると、また仕事を頑張れるということもあると思うので、とてもよいと思います。
【女性の活躍推進】
―貴社は女性の活躍が目立ちますが、女性支援のための特徴的な取り組みがあれば教えてください。
よく聞かれるのですが、特に女性をターゲットにしてやってきたことはありません。あくまでも男女平等で、個人の違い、要するに男性も女性も同じように見るということをずっと貫いてきています。それが女性が活躍していている要因だと思います。それから、若いときから責任のある仕事が任せてもらえる風土があることや、子育て中でも両立支援をしながら仕事は元の仕事のレベルを求めていってキャリアアップをしてもらえるかという考えを貫いてきているからだとも思います。
具体的な取り組みとしては、男女問わずロールモデルをある程度顕在化させて、イントラネット上で掲示をしています。例えば、子どもを3人産んで課長になった人が出ていて、自分も頑張れるんだという意識や意欲を出してもらう働きかけをしています。あとはトップの発信です。経営戦略として女性を重要視していきたいという発信が昔からありましたし、最近では、社長と女性社員の座談会を実施し、社内報に載せて思想を伝えています。
―女性のためというより、男女平等で考えていたら、このような結果がついてきたということなのでしょうか。
全くその通りです。女性に下駄を履かせるとか、女性にターゲットを絞って何かするということは特にしていません。昔から、男女平等を貫いて、且つ女性や出産や育児で辞めていくのを食い止めるために、いかに支援して働いてもらうかを考え続けた結果、女性が残って活躍できる環境ができました。残った人は段々昇進をしていくので、そうすると女性の課長や部長がいて当たり前になるというわけです。「男性」、「女性」という意識は全くないですね。
―数々の両立支援策がありますが、これらを導入したことによって全体的に何か変わったことはありますか。
育児休職後の復職率が1993年頃からぐっと上がってきました。子どもができたから辞めるという人がいなくなり、ほぼ全員が育児休職を取っています。90%くらいが復職するので、定着率が上がったと言えると思います。あとは、世の中から色々な表彰を受けていることです。1990年頃から両立支援策を導入してきましたが、その結果、1999年に第1回ファミリーフレンドリー企業 労働大臣優良賞を受賞しました。これで企業イメージもアップしていますし、事業にも貢献しています。その後、ファミリーフレンドリーだけではなくて、独身者など「全社員」という思想に転換していって、両立支援策も均等推進も推し進めていって今年、均等・両立推進企業表彰 厚生労働大臣最優良賞を受賞しました。
【今後の課題】
―最後に今後の課題などがあれば教えてください。
ファミリーフレンドリーだけでなく、独身社員にとってのWLBの実現を考えていきたいと思っています。具体的には、長時間労働の是正のために有給休暇取得の促進です。働き方の柔軟性というところだと在宅勤務制度です。在宅勤務制度は来年度から本格導入をするのですが、子どもを持つ社員だけではなく、ある程度のランク以上の社員はみな取れる制度にしようとしています。これを上手く使うと、通勤時間が3時間削減される社員も出てくるので、その時間を自己啓発でも自分の時間など有効に使ってほしいです。あとは、休養したり、自分を見直すという機会は、子どもが産まれた育児休職者だけではなく全員に必要だと考えています。その考えから、自分の今までを振り返るという休暇を来年度から新たに入れる予定です。
―本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
【レポート作成者】
法政大学キャリアデザイン学部 田中英美












