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WLB推進企業レポート掲載!『株式会社三越ライフタイム』 (『大学生の視点』からワークライフバランス推進に取り組む企業を取材!)

2009/02/18

                     

株式会社三越ライフタイム

~一般に従業員の離職率が高いといわれる介護サービス事業において、従業員が定着している株式会社三越ライフタイム。個人のキャリア支援の理念を明確にしたワーク・ライフ・バランスの考え方がユニーク。ご担当の板垣慎司様にお話を伺いました~

【企業概要】

事業内容
 通所介護サービス事業
設立年
 2001年(三越保険サービスから分割し、日本ケアサプライと共同出資の合弁会社
 として設立)
従業員数
 25名(男性 10名 女性15名)常勤介護職 17名 非常勤看護師及び運転手 8名

【ワーク・ライフ・バランスに取り組む背景】
―三越ライフタイムでは、どのような目的でワーク・ライフ・バランス(以下WLB)を進めていますか。
 制度があるのに使えないという状況を変えるためです。育児休暇や介護休暇、勤務時間など、基本的な条件については国が法律などで権利、制度として定めているため、どの企業も一定水準の制度になっているはずです。しかし、制度の存在を知らない従業員、他の様々な要因から制度利用を諦めている従業員が多いのが現状です。
 また、制度に関しては従業員側から提案しにくいことでもあります。例えば、有給休暇を取得しやすくしましょうと従業員が提案をすると、「働くのが嫌い」、「仕事に熱意がない」と思われて昇給や昇進に影響するのではないかと不安に思うのが普通です。これは、日本全体の意識や風土に問題がありますが、私は、これはおかしいなとずっと思っていました。介護サービスを始めるにあたって、ここの事業部門は、制度を従業員のためにきちんと運用させてみようと思いました。
 こうした思いがあり、当社が介護サービス事業を開始する際に、従業員のWLBが実現するような会社に作っていこうと皆で話し合い、従業員のために導入してきた制度を生かすため、会社側が主導して取り組んできています。

―WLB施策に取り組み始めるきっかけになったことはありますか。
 介護を必要とする高齢者の方たちにサービスを提供する側がいきいきしていないと、サービスを受ける高齢者の方たちをいきいきさせられないと思ったことがきっかけです。
 介護サービスは接客業であり、直接お客様と触れ合うので、従業員の体調や気持ちがお客様へのサービスの質に影響してしまします。従業員が笑顔でいきいきと働ける職場を作らないとお客様も笑顔になれませんし、笑顔が消えていくと評判は悪くなって利用者が減り会社も消えてしまします。
 どこの介護施設も介護の料金は介護保険法で定められた一律の料金体系になっているため、一般的な民間企業のように価格面で他社との差別化を図ることが難しいです。したがって、従業員のいきいきとした心のこもったサービスの質が、他社と差別化を図る上で重要になります。
 従業員がいい仕事をできるようにするためには、働き甲斐がなければなりません。働き甲斐の大きな要素は、「給料」と「職場環境」の2つと考えていますが、給料に関しては、先ほど介護保険法に触れて述べたように料金設定を高くできないので限度があります。そこで、働き甲斐を高めるために職場環境を良くするという視点からWLBの試みが必要と考えました。

【具体的な取り組み】
―三越ライフタイムで実施している施策の中で特に力を入れていることは何ですか。
 従業員が制度を利用するだけでなく、利用した後のこともきちんと考えています。
 たとえば、育児休業制度の利用者がいて職場から1人減った時に、他の従業員への負担がかからないようにするためと、サービスの質を落とさないようにするために、新たに1人正社員として採用しました。少人数の会社では1人の存在が大きいだけに、育児休業を利用させるにはそれなりの覚悟が必要です。育児休業期間が終わると、もともとの従業員数より1人プラスになるので、その分一人当たりの収入の伸びは減ることになります。
 そうなると、不満に思う人も出てきて当然です。そこでどちらを選択するかということになります。「僕は、処遇はそれほど良くならなくても、その人が新しい命を迎えて、子どもを育てるのを応援したいと思うんだけどどう?みんなで支えていこうよ。」と話すと、ここのみんなは受け入れてくれました。

【職場の状況や雰囲気について】
―少人数だからこそ従業員みんなが助け合っていると感じました。
 介護サービスは個別性が高いことから、一つの営業所に配置する従業員数が少ないので、他の企業では人間関係に問題ができて辞めていく人が多いとも言われており、小さい営業所の難しさもあります。でも、自分自身の生きる姿勢を強く持っていれば、職場の人間関係に問題は生じないものです。
 実際に、介護業界を志す人は、職場で仲のいい友達を作って親密になるような関係が好きじゃない人も多いんですよ。それは、それだけみんな仕事に対してプロ意識を持っているからです。例えば、ビートルズにしてもSMAPにしても一世を風靡したグループは、プライベートでは一緒にご飯食べなかったり、連絡取らない仲だと言われますよね。「仲良しこよし」は仕事で通用しないこともあります。育児休業を取得して職場から一人いなくなることになったときに、「今まで一緒に頑張ってきたじゃない」などと感情的にならず、自分がサポートすることの重要性やサービスにどう影響するかなどを理性的に考え、職場として対処できるので、自然と助け合う雰囲気ができています。

―働く人たちがプロ意識で仕事に臨んでいるということですね。
 当社の採用は、同業での経験よりもサービスマインドを重視した採用を行っています。このようなサービスマインド重視の採用にしてから4年間、退職者は一人もいません。この業界は半年で辞めていく人が多いので、この定着率の高さは珍しいことです。
 会社のためや売り上げのために全身全霊を捧げて頑張るというよりも、自分自身がどう生きるかを第一に考えている人を採用しています。面接では志望動機よりも、今までの人生の中で一番悲しかったことは何か、どんなときに「よっしゃー!」って思いましたか、などといったことを聞いていき、その人がどのような生き方を考えているのかを引き出しています。そして、「そういう生き方をしたいと考えているなら、うちの会社を踏み台にできるかもしれないよ。」と声をかけています。当社としても、うちの会社で一生働いてほしいという気はそれほど強くはありません。
 中には、介護業界とはかけ離れたネイルアートの仕事を次のステップに考え、「将来的にはお年寄りの爪のお手入れもしたい」と語る人もいます。そういった人は、周りにも、自分のことを考えるきっかけを与えてくれます。
 このように、自分の人生と正面から向き合い、自分の生き方を主体的に考えている人たちが集まっているからこそ、WLBについても真剣に向き合ってくれているのだと思います。

【WLBの取組の効果・今後の課題】
―これまでの取り組みでどのような効果が出ていますか。
 介護サービスの質が向上し、評判が良く、施設利用者も増えました。おかげさまで、今利用者がいっぱいで申し込んでもお待ち頂く状態です。
 他では潰れてしまう介護事業者があったり、辞めていく人が多いといわれたりする中、当社では一人一人が輝いているし、本当に心を込めたサービスができる人達が働いてくれています。利用者が増えたのも、評判が良くなったのも、従業員一人一人が輝いているからだと思います。個人のモチベーションだけで輝こうと思ってもなかなか難しいので、チームや組織全体で考え、支え合うことが大切だと思います。
 また、これまでの取り組みを通じて、会社がWLBについて真剣に考えている熱い気持ちが従業員たちへ伝わり、「有給休暇を取りやすい仕組みを考えませんか。」といった声が従業員側から出てきました。そして、サービスに支障が出ない範囲で取得日数を増やすことを目標にし、計画表を作って計画的に取得をして、従業員がお互いに休暇を埋め合わせして業務ができるようになりました。

―今後の課題はなんですか
 今ある制度を活かすので精一杯ですが、一つは、ボランティア休暇や地域活動休暇が制度化できればいいなと思っています。
 将来的には、WLBの取り組みを商品やサービスの価格に反映させられる社会になればと思っています。つまり、WLBに積極的に取り組んでいる会社の商品は他より高いということです。なぜなら、コストがかかっているからです。当社のビジネスで例えると、育児休業取得者のために新しい人を雇い、その分の人件費をかけてまでサービスを維持しているわけですから、その分はサービスの価格が上昇してもいいと思うのです。そうしないと、このように人件費に投資できない現状を抱える会社にWLBは浸透していかないです。ただし、それによって良質なサービスが提供できるわけですから、利用者の納得も得られるのではないでしょうか。
 たとえば、「エコ」に対して追加的なお金を払うということは最近ようやく広がりつつあります。レジ袋有料化や環境のことを考えた自動車など、エコを推進していることに納得してくれて消費者がお金を払ってくれる。WLBを進めることも、一方でコストが発生する部分もあるわけですから、消費者の皆さんにそうした認識をもっていただければ、社会全体としてWLBが進むのではないかと思っています。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

【取材を終えて】
―三越ライフタイムでは、真剣に従業員のこと、お客様へのサービスのことを考えて、有効的な取り組みを行っていました。そして何よりも、担当の板垣さんの熱い想いが伝わってきました。WLBの取り組みに一番必要なのは、会社の規模やお金よりも、板垣さんのように本気で考える姿勢だと感じました。

【レポート作成者】
 法政大学キャリアデザイン学部 鈴木杏奈

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