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富士ゼロックス株式会社(大学生によるワークライフバランス推進企業への取材2009)


富士ゼロックス株式会社

〜数多くの制度を長年にわたり実施している富士ゼロックス。人事部の夏井孝子様にお話を伺いました〜



【企業概要】

事業内容
 オフィス複写機、ワークステーション等の製造及び販売
設立年
 1962年
従業員数
 単独 全体10,873人 男性9,462人 女性1,411人 女性比率12.9%
男女別勤続年数
 男性19.5年 女性14.2年
女性管理職比率
 2.1%
年間総労働時間
 平均1,970時間

【ワーク・ライフ・バランスの取組方針】
―ワーク・ライフ・バランスの取組方針についてお伺いいたします。経営のトップの方の考え方について教えてください
 ワーク・ライフ・バランス(以下WLB)については重視しています。当社では、法律に先駆けて育児休職制度などを導入してきてきた流れがあります。富士ゼロックスとしては、WLB施策は、子育て支援、女性のための支援という両立支援のみならず、個人の多様性を尊重し、人材活性化、企業競争力の向上という経営に直結した考えをもっています。 社長自身も、多様な人材が力を発揮する、それが企業の長期的な成功になると述べています。

―経営の面を重視してWLBに取り組んでいることがわかりました。では取組状況や内容について教えてください
 取組状況ですが、まず個人の発想を大切にして、社員に活き活きと働いてもらうため、1988年に「New Work Way」が始動しました。このときに、育児休職制度、半日有給休暇制度などが導入され、その後90年には、家族介護休職制度、ボランティア活動を行う場合最長2年休職できるソーシャルサービス制度などが制度化されました。1990年前後に今ある制度が導入されています。

—社員の方のニーズについてはどのような場面で把握するのですか
 人事が相談に乗り、実態を把握することで対応していますし、労働組合と委員会活動を持ったこともあります。


【育児・介護支援に関する制度】
―育児や介護関連の諸制度についての特色を教えてください
 産前産後休暇が有給であるということがあげられますね。また当社の場合、育児休職から復帰するときは勤務時間短縮を取得する社員が多く、柔軟な勤務形態を選択しています。
 また積立休暇という制度があります。これは毎年付与される有給休暇を使いきらなかった場合に、最大60日分まで貯められるというものです。それを、例えば自分が病気になった時、介護の時、子どもが病気の時などに利用できます。社員にはこの制度により、安心が生まれていると思います。

―とても貴重な制度ですね。社員の方にとって、病気や介護の不安は大きいと思うので、精神的にも安心が生まれると思います。では、制度の取得状況を教えてください
 女性の育児休職はコンスタントに毎年50人程が取得しています。男性の育児休職の取得者についても、少ないながら増えてきていますね。勤務時間短縮制度も1997年には42人だったのが2008年には165人と、年々取得者は伸びてきています。

―他にはどのような制度がありますか
 育児休職制度については、2003年に夫婦が同時に使用することを可能にしました。これは、育児に対しての考え方が変わり、育児は母親一人だけでするものではないという考え方が背景にありますね。
 また、育児、介護時の勤務時間短縮制度について、月度清算型フレックスタイム制度を導入しました。月のトータルの労働時間数で勤務管理をするというものです。育児は周りからの協力があれば仕事に集中できるときがあるし、残業もできる場合がある、という考えから、育児・介護のための務時間短縮制度に導入しました。ここにも、育児は女性(母親)が一人でやるものではないという考え方が背景にあります。
 また、2008年からは、育児による勤務時間短縮制度の適用期間を小学校三年までに延長しました。社員のニーズによるものですが、しかしある一定期間を経たら通常勤務に戻っていただきたいと考えますので、時短の期間をさらに伸ばすことが良いとは思いません。

―確かにそうですね。休むことが目的になってしまっては、この制度が活かされてこないと思います。妻が出産する際の特別休暇の付与日数拡大とありますが、これはどのようなことですか
 出産の際は、有給休暇とは別に特別休暇が取れる制度です。当初は2日と決まっていたのですが、第2子が生まれる時は、夫が上の子の面倒をみるということが考えられるので、第2子以降は5日間取得できるようにしました。実際、導入初年度の昨年に取得した男性社員は50人もいますので、ニーズが高いということが解ります。

―ではこのような制度をどのように周知していますか
 社内報で男性の育児休職の実例を紹介したりしています。また組合が広報誌を出しており、営業で育児休職を取った人の座談会というものも企画されています。
 マネジャーに対しては、育児マネジメントガイダンスという冊子を作り、部下で制度を取得する人が出たらそれを渡したりしています。

―休業制度利用者の職場復帰の状況を教えてください
 女性の出産者の職場復帰についていえば、産休後の復帰は2%で育休後は92%となっています。このようにほとんどの方が制度を活用して職場復帰しています。

―育児休職や時短制度を利用した人の仕事はどのように補足・フォローしているのですか
 現場のマネジャーのマネジメントに任せています。

―ありがとうございます。これらの制度により、女性の方が働きやすくなってきているように思います
 そうですね。女性全体に占めるワーキングマザーの割合も3割です。女性の勤続年数も伸びてきていて、結婚や出産がハードルにならなくなってきていると言えますね。


【労働時間短縮についての取組】
―労働時間の短縮において注力した点があれば教えてください
 本社では、週3回ノー残業デーを実施しています。ただ労働時間の短縮を行う意義として、本当に生産性向上につながっているのか、ということの検証は、次の課題としてあると思っています。
 また無駄な仕事はなくし、生産性をあげていくことを求められていますし、会議の時間短縮などそれぞれの部門で努力・工夫をしていると思います。会社全体として、労働時間を短くして生産性向上するという流れはあります

―マネジャー層の理解はありますか
 たとえば当社には、永年勤続休暇という制度があり、勤続の節目に休暇をもらえます。こうした制度について社内の理解は浸透しており、誰かが休むといったときそれを認めようという風土はあるようです。当社では、マネジャーが休まないから他の社員が休めないという雰囲気はありません。


【再雇用制度】
―なるほど。御社では再雇用制度があるようですが、これについて教えてください
 再雇用制度は以前からありましたが、対象者および、対象期間を見直しました。再雇用制度を、配偶者が海外などに転勤した場合を想定して設計しました。優秀な女性社員が配偶者の転勤で辞めるというケースがあったことがきっかけです。退職時に登録をし、戻ってきったらまた再雇用するという形をとっています。ただ制度があっても採用がないというのでは意味がないので、登録した場合5年以内の復帰が再雇用の条件です。

登録者は誰でも再雇用されるのですか
 登録の際には、人事の面談があります。本人の意思が明確であるということと、本来ならその事情がなければ富士ゼロックスで働き続けていたという条件があります。そうして登録されれば、原則として再雇用ができる仕組みです。すでに1名が再雇用され以前の現場に戻っています


【メンタルヘルス対策について】
―メンタルヘルスへの取組はどうなされていますか
 体制については整っていると思います。社員全員面談というものを実施しています。これは健康診断や人間ドックの結果を見て、産業医がアドバイスやメンタルの部分のケアをするというものです。また、長時間労働者を対象にした産業医との面談制度があります。
 会社としてマネジャーに、部下の変化に気づけるよう教育をしています。また個人の仕事にはクセがあるので、そこはマネジャーがその人の仕事を整理しています。
 マネジャーは、時間管理から外れますが、自身の健康のために、始業時間と退勤時間を管理しています。

―24時間フリーダイアル電話相談について教えてください
 これは健康保険組合によるもので、24時間健康や医療、介護・育児などについて相談ができるという制度です。電話をすると、相談した内容に関して、専門スタッフからの適切なアドバイスをもらえます。私も電話をしたことがあるのですが、回答のレベルは高いと思います。メンタルヘルスの相談もできます。


【今後の課題】
―制度導入で苦労や工夫した点はありますか
 休職や時間短縮などにより評価がマイナスにならないよう制度設計を進めてきました。またイントラネットにより考え方や心構えを周知し、手続きもわかりやすく解説し、必要帳票がすぐ取り出せるようにしています。

―今後の課題を教えてください
 まず働き方の変革が言われており、日常の勤務を振り返り、仕事の進め方ややり方を見直し、生産性を高めて、自らがWLBを推進していくことです。
 そのためにマネジャーは職場での業務配分や組織内の効率的な仕事の進め方が求められますし、社員一人ひとりも上司や周囲の人とコミュニケーションをとってお互いの理解を深めていく努力が必要になります。
 また一部職場でトライアルとして行った在宅勤務や裁量労働など、場所や時間の柔軟性を高めた新しいワークスタイルの検討も進めていくことになると思います。


—本日は貴重なお話をありがとうございました

【インタビューを終えて】
 今回初めてのインタビューということもあり、とても緊張していたのですが、夏井様がとても話しやすい方だったので、スムーズなインタビューができたと思います。
 富士ゼロックスについては本当に多くの実践的な制度があり、WLBが整っているという印象です。なかでも富士ゼロックスの素晴らしい点は、先進的な取組を当たり前のこととしているという点だと思います。今では一般的になっている制度を法律が施行される前から実施し、会社に浸透させ、制度をより効果的なものにしてきていると感じました。1988年のNew Work Wayから育児休職制度などを取り入れているので、WLBを推進することに抵抗がない社風がつくれているということが、インタビューをしていく上で感じ取れました。
 そして、そのような社風のなかで仕事をするので、マネジャーの方のWLBに対しての意識がとても高いと思いました。WLBを推進する上で、上司の理解はとても重要だと思います。そういった事を考えると、会社としての社風、上司の理解など富士ゼロックスはWLBを推進するための環境が整っていると思います。このように、時間をかけてWLBの推進に取り組んでいるので、今では当たり前である制度を、一歩先の形で制度化されていると思いました。
 今回のインタビューを通して、人事部の方はWLB推進制度をより良い制度にするために多くの工夫をされて作っていることがわかりました。また、制度の取組状況などにも目を配らないといけなく、WLBを企業に推進することが簡単なことではないということがわかり大変貴重なお話が聞けたと思います。
 私個人としても発展した知識を身につけることができたインタビューでした。

【レポート作成者】  法政大学キャリアデザイン学部 武石恵美子ゼミ3年 井上 達成

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