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アステラス製薬株式会社(大学生によるワークライフバランス推進企業への取材2009)


アステラス製薬株式会社

〜アステラス製薬株式会社のワーク・ライフ・バランスの取組について、人事部ダイバーシティ推進室長 米奥美由紀さん、人事部報酬・労政グループ次長 芦澤幸裕さんにお話しをうかがいました〜



【企業概要】

事業内容
 医薬品の製造・販売および輸出入
設立年
 1923年
従業員数
 5,473名(2009年3月末現在)
男女別従業員数、平均年齢、
平均勤続年数
 男性4,649名(41.0歳 15.8年)
 女性824名(36.4歳 12.9年)

【ワーク・ライフ・バランスへの取組の背景】
―貴社のワーク・ライフ・バランスについて、経営トップの方のお考えを教えてください
 時間は経営資源であって、社員に対するワーク・ライフ・バランス(以下WLB)支援は一人ひとりに対する「福利厚生」ではなく「人材育成」のために必要なものである、そういう考え方です。
医薬品を製造する部門では,以前より「時間 イコール コスト」という考え方で業務管理を行っていますが、それと同じようにそれ以外の部署でも、時間は経営にとっては資源です。その点を意識した上で、社員が仕事と仕事以外の生活の両方とも充実させるような会社としての支援、経営としての支援が必要だと考えています。
今後の日本社会はますます少子高齢化が進んでいき、日本の労働力人口はどんどん少なくなり稀少になっていきます。アステラスという会社を学生さんが選んで入ってきてくれる。22歳で入ったとして60歳の定年まで38年間あるわけですが、せっかく入ってきてくれた優秀な人材がアステラスの中で思う存分力を発揮してもらえるためにはどうしたらいいかということを考えています。
一人ひとりライフステージによって仕事とプライベートのいろんなバランスが出てきます。結婚、出産、育児、介護、ケガなど男女に関係なく様々なライフイベントが考えられます。一時的にライフに対するウエイトが高まることは仕方がないことですが、本人も会社もキャリアの継続を希望しているにもかかわらず、制度が無いために会社を辞めなければいけないという最悪の事態は避けたいと考えています。アステラスでのキャリアの継続を通して成長して欲しいというのが経営トップの想いです。
 また、社員のワーク・ライフ・バランスを高めるということは社員の我侭を許すということではありません。仕事は一人でできるものではなくチームワークで進めるものです。組織の各メンバーが互いに認め合い助け合うことで良い成果が生まれます。制度を利用する社員は権利を主張するのではなく誰かの支援があって成り立っているという感謝の気持ちを持つことの大切さも常に発信しています。

―WLBに取り組んだきっかけはなんだったのでしょうか
 最初のきっかけは、2005年に二つの企業(山之内製薬と藤沢薬品工業)が合併しアステラスがスタートしましたが、1年経過する過程で多くの課題が見えてきたことです。その課題をどう解決しようかという時に、会社側だけでなく労働組合とタッグを組んで課題を整理することにしました。2006年に6つの労使委員会を立ち上げ、もう一度アステラスにふさわしい制度の見直しに取り掛かりました。
 その一つが「ダイバーシティ」です。特に女性の社内での活躍を今後どう進めていくかということが大きなテーマの一つでした。このことを解決しようと思うとWLB施策は不可欠なんです。これなしに女性の活躍はありえないわけです。女性固有のライフイベントを無視して女性の方に活躍してもらおうとすることは難しいからです。制度をうまく活用するために必要になってくるのは社員の意識と職場の風土です。2007年以降、そのことを同時並行的に進めてきました。

—WLB施策の企業にとっての意義とはなんでしょうか
 アステラスで働く社員がその能力を会社の中で活かし続けられることです。活き活き働くことで能力を活かし続けることができて、最終的に企業価値の持続的向上につながります。


【WLB推進のための取組内容】
―WLB推進のための取組の状況とその内容について教えていただけますか
 大きくは育児支援と介護支援です。そして労働時間の問題については、過重労働にならないようにするための仕組みに取り組んでいます。10月からは在宅勤務も導入しました。
 育児に関しては、法定以上の育児休業制度、育児のための短時間勤務制度があります。特徴的なのは母性保護休暇です。妊娠は個人差があり、つわりがひどくて出社できないようなケースもありますので、そういう時に体を大切にしてもらうために対応する休暇です。長期的に入院、安静が必要な場合には、長期の特別療養休暇を作っています。また、出産・育児からの復職時にも追加の有給休暇を付与して、子どもの予防接種や病気の時の看護など、様々な理由でお休みする部分をサポートしています。
 また、育児に専念している休業中は、会社の状況がわからなくなりますが,豊かな子育てライフとスムーズな職場復帰をサポートするために、育児休業復職支援プログラムを導入しています。会社の状況を知る、休職中に能力開発を行うなどのサポートとともに、復職をスムーズにするための上司との面談ルールも決めています。
 介護に関しては、介護休業期間を法定以上に設定し、通算で一年間とれるようにしています。介護のための短時間勤務もあります。育児の場合は1日に1時間や2時間の時間短縮ができる制度ですが、介護の場合はニーズが個別に異なることから,短時間勤務を多様に設定し、より柔軟な制度を導入しています。

―これらの制度は非正規社員の方も対象となっているのですか
 同じ職場で働く仲間ですから、職場全体のマネジメントの観点からも可能なものは極力一緒にしていますが、託児費用補助は非正規社員の方には支給していません。

―FFdayの取組について、従業員の方への周知はどのように行っているのでしょうか
 今年の4月から金曜日の所定労働時間を短縮しました。例えばこの本社地区は17:45だった終了時間が16:00になりました。お昼休みになると「今日はFFdayです」というメッセージを流し、16時退社できるように自分で仕事の段取りを考えてもらうよう意識付けしています。
 もうひとつ視覚に訴えようということで社内ポスターを三種類作りました。その内1つを金曜日の朝は社員通用口に掲示しています。

―WLBの考え方を社内で浸透させるためにやっていることはなんでしょうか
 FFday導入によって、「時間」に対する意識が高まっています。そこで、社員全員がWLBについて正しく理解し、時間制約を前提とした働き方が重要であることに対する意識を高め、自分のWLBや働き方について振り返ることにより、働き方を変えてみるということをテーマにしたWLB職場研修を実施しています。今回はWLBに関する映像を視聴した後、一人ひとりが働き方をどう変えていくのか、職場の実態に合ったやり方を考えて、まず1カ月実施してもらっています。その結果を振り返えりの職場会で確認し、働き方の見直しへと繋げていきたいと思っています。PDCAサイクルを回していくということです。

―職場研修は年にどのくらい実施しているのでしょうか
 ダイバーシティに関連する研修は、半期毎にテーマを決め、継続的に実施しています。今年度、上期は良質なコミュニケーションをテーマとした職場会を2回開催し、下期は、先程お話したWLB研修を実施しています。

―それは全社員が対象なのでしょうか
 国内のアステラスグループの全社員が対象です。海外と日本ではダイバーシティへの取り組みは大きく違います。日本は女性の活躍度が低いという問題がありますので、ジェンダー・ダイバーシティの取り組みが進められていますが、アメリカでは、国籍のダイバーシティに対する取り組みが重要です。また、ヨーロッパも法律が異なることから、取り組みの内容も違います。


【FFdayについて】
―FFdayについて、詳しく教えてください
 事業場によって時間の設定は違いますが、本社地区でいうと、8時45分から17時45分までが通常の勤務時間ですが、金曜日だけ終業時間を16時に短縮しました。16時以降の使い方がまさにWLBです。単身赴任の方もいますからそのまま新幹線で帰って家族と夕食を食べる時間も作れますし、独身者であれば自己啓発のための英会話学校に通うとか、もしくは近くのスポーツクラブに行き体を鍛えるとか、映画に行くとか、自由に時間を使えます。週末に一週間の疲れをとってリフレッシュして、また翌週活力を持って仕事ができるということを狙って金曜日に思い切って早く退社してみようという施策です。
勤務時間を短縮する場合は。月曜から金曜まで平均的に短縮するのが一般的です。17時45分を16時にしましたから、平日1日の平均に直すと20分くらいの短縮です。終業時間を17時45分から17時25分にすることも1つの選択肢ですが、今回は単なる所定労働時間の短縮ではなく、実質的なWLBの向上に有効な制度とすることが目的だったことから、特定の1日を思い切って時間短縮しました。その方が人それぞれの時間の使い方が生まれてきますし、一人一人の社員が時間をどう使うかを考えてくれます。

―FFdayを導入した際の社員の方の受け止め方はどういうものだったのでしょうか
 最初は「そんなことできるわけないだろう」という意見がありました。実際には、8時45分から17時45分の8時間勤務ですべての仕事が終わっていたわけではありません。どうやったら労働時間が短縮できてWLBにつなげていくことができるのだろうかと各職場で考えてもらいました。やってみてうまくいったら継続すればいいし、駄目だったら途中で変えればいい、「やってみよう」ということでスタートしました。
 方針を出したのは2007年下期です。それが各職場で本当にできるかどうかを2008年度一年間試しました。どうやったらそれぞれの職場で金曜日に16時に帰れるようになるのか、一年間をかけて検証しながら仕事の仕方も変えて試してもらいました。結果的には多くのアイディアが出て、金曜日16時に帰れるようにやってくれています。金曜日に限っては7~8割は少なくとも17時台までには帰るようになっています。
 電話をして相手側の部署の担当者がいないことも受け入れるようになりましたし、会議を16時以降は設定しないなど、組織が全体として時間短縮する方向に向かっています。

―社員の方に変化はありましたか
 「時間」に対する意識や仕事の進め方に対して変化が生じていると思います。極端な例ですが、終電の時間は24時○分だからその時間までは仕事ができる、という考え方の社員もいました。今は、少なくとも金曜日は16時に帰るためにどうしたらいいかを皆が考えています。定時以降も仕事をずるずるとやっていないか、この仕事は本当に今日やらないといけない仕事なのか、これが会社にとって必要な仕事なのか、と一人ひとりが考え始めると、社内での過剰なサービスや不要不急のものが少しずつ抜けていき、労働時間の短縮に繋がっていると思います。更に、「金曜日だけではなくて月曜日から木曜日も同じことができるのではないか」と波及していけば全体の労働時間が少しずつ短縮していく。そういう効果も期待しています。

―個人の意識が変わることで仕事の進め方が変わり実現できているわけですね
 各職場のマネージャーが常に意識し、マネジメントを行っていくというのも大事ですが、一番大事なのは、社員一人一人が時間は無限ではないということを理解して、限られた時間の中で自分に与えられた仕事をいかに効率よくするか考えることです。

―FFdayの日にどうしても残業しなくてはいけない時に手続きは必要なのですか
 今日中にどうしてもこの仕事をやらなければならない場合は、本人と上司が口頭でその必要性を確認し、判断しています。


【メンタルヘルスの取組】
―メンタルヘルスの取組についてどのようなことを行っているのでしょうか
 メンタルヘルスに関しては①セルフケア②ラインによるケア③事業場内保健スタッフ等によるケア④事業場外資源によるケアという4つの指針に加え、⑤快適職場づくりにも取組んでいます。①~④はどの会社でも取組んでいると思います。+⑤を実施することにより職場風土をよりよくすることでマイナス要因を少なくできると考えています。また、簡単なことですが「挨拶運動」に取組んでいる職場もあります。朝の「おはようございます!」という一言を職場の皆で交わすことで気持ちよく仕事に取り掛かれるようです。
外部機関(上記④)を利用した場合は、個人名の特定はせずに相談内容の概略が会社に伝わるようになっています。会社としては個別相談の中身にどういう事例があるのかを見ながら、全体としてカバーすべき施策があれば会社で対策していくというのが一つです。
また、大きな事業場ごとに産業医の先生方を配置しています。特にメンタルヘルスの専門家として精神科医を3箇所に配置して相談ができるという体制をとっています。

―社員の方がメンタル的な悩みを抱えた場合、具体的にどのような対応をされるのでしょうか
 社員が相談できる窓口が複数ありますので、自分に適した窓口に相談しています。一個人からすると自分がメンタル面で問題があるかないかということも不安ですし、逆にもし問題があるとしたらそのことが会社に知れることに対して今後の自分のキャリアに影響するのではないかという不安を抱く人もいます。自分の調子がおかしいなと思ったときに、すぐに会社の保健スタッフや上司に相談するということよりも、まず社外で相談したいと思う方もいますので、安心して相談できる外部の機関を用意してあげるということも重要な施策になっています。産業医の先生に相談された場合には、相談者の状況によって今後どうしたらいいのか、産業医の先生と相談しながら個別に対応していきます。外部に相談された場合には外部の専門家に委ねることになります。外部の機関の方がこのまま放置しておくと危険だと判断した場合には会社に連絡をもらい共同でフォローしています。

―メンタルヘルスの問題の背景は何なのでしょうか
 個人のプライベートな問題の可能性もあるでしょうし、仕事に関連した悩みが原因になっていることなど様々でしょう。マネジメントや職場風土が原因になることも考えられることから、セルフチェックと同時に職場診断(Webを使ったアンケート)を定期的に実施しています。マネジメントや職場風土に問題がありそうだとわかった場合には、会社として該当のマネージャーを指導していきます。そういうことをしながら社員全体のメンタルヘルスに目配りしています。


【男性社員の育児休暇取得について】
―男性の社員の方が育児休暇をとっていることですが
 最初の方は2日間の取得です。2人目は2007年度1年間取得されました。彼は「1年とってみてすごく良かった、育児のおもしろさ、重要さがわかった」と社内報にも記事を書いてくれています。それから2008年度以降、少しずつ増えてきていますね。

―男性が育児休暇を取得したことに対しての社内の反応はどのようなものだったのでしょうか
 相当インパクトがありました。制度として利用でることはわかっていても、実在者がいるのといないのでは大きく違います。1人目がでると2人目以降がでてきやすいようです。「0人」という会社と「1人」という会社では大きく違うと思います。
 特に1年間とられた方の職場というのは衝撃がありました。ただし、その時の上司は1年休むことに対して仕事の手配もきちんとして、彼が復職する時にもスムーズに復職できるようにしていました。特に1年とったからどうかということよりも、プラスの効果が大きかったのではないかと思います。長期間仕事を休むと、その間の仕事をどうしていくか考えるのはマネージャーの職務です。制度利用者は原職復帰としていますので、どういう風に人員の不足を充当していくかということを考えることが必要になります。

-それは埋め合わせのために誰かを採用しているわけではないということですか
 いろいろなやり方があります。例えば、休業期間中に限定して派遣社員を雇用することもありますが、正社員がやっている仕事のすべてを派遣社員の方に担っていただくのは無理なんですね。その場合は、休んだ方の仕事の中で、正社員がやるべき仕事を他の正社員が担当し、定型的な業務を派遣社員の方に補っていただくことになります。業務によっては、アウトソースすることもあります。休んだ方の仕事を他の社員がフォローすることにより、人材の育成につながるという面もあります。

―男性で1年休暇を取得した方の場合はどのようなものだったのでしょうか
 補充をせずに職場の社員に仕事を振りました。


【在宅勤務制度】
―新しくできた在宅勤務制度の有効性を教えてください
 一つは通勤時間です。東京地区で考えると、おそらく平均1時間、長くて2時間ぐらいでしょうか。その2時間を他のことに使えて、有効活用できる。例えば育児であれば、お子さんを保育園に連れて行って、会社に来て、また迎えに行ってという行き来の時間がなくなりますから、余裕を持ってお子さんを保育園に預けたり、迎えにいけます。精神的疲労、肉体的疲労も軽減します。これがまず第一点です。
 また、会社の中で仕事をしていると周囲から話しかけられたり、電話によって仕事が中断されてしまうことは以外に多いものです。そのことによって仕事全体の能率が少しずつ落ちてしまう。しかし、家で仕事をすると集中できます。いままで会社にいると8時間かかっていたものが場合によっては6時間ぐらいでできてしまうようなケースもあります。そういったところに利用した方々は有効性を感じているようです。

―在宅勤務対象者について、制限を設けているのはどうしてですか
 入社1年以上の従業員であること。組織全体の生産性が維持・向上することを前提に部門長が組織内での利用を認め、本人の申請にもとづきその職務内容等を勘案の上判断する。というざっくりとした基準を設けています。在宅勤務は全ての従業員が利用可能な制度ではなく担当している職務内容によって向き不向きがあります。また同様な職務内容でも本人の日ごろの仕事の進め方を見る限り難しいと判断される場合もあるかもしれません。細かなルールをあれこれ設定するよりも、組織全体のパフォーマンスを維持・向上する前提で具体的な認定は各組織に委ねることが制度の有効活用につながると判断しました。

―在宅勤務について具体的な活用方法はどのようなものがあるのでしょうか
 WLBを考える時、通勤時間の有効利用(保育園等への送迎、子供の学校行事への参加等)のほかにも、弊社の場合は海外展開をしている関係で、例えばどうしても海外の方との情報連携(電話会議等)が発生します。日本、アメリカ、ヨーロッパで時差があるので、日本時間の深夜に会議が設定される場合が多くあります。海外と会議をやるために仕事が終わっても会社に残っているのは無駄です。そういった場合は例えば6時で区切りがついて終わったなら、10時から始まる電話会議は家から参加することで時間が有効に使えます。


【WLB施策実施の効果】
―WLB施策実施のこれまでの効果についてお聞かせください
 離職率の低下があげられます。また、FFdayの導入は、トライアル実施を含め、実質労働時間が減っていることです。
加えて、会社に対する社員のイメージが変わってきているなと思います。当社は2つの会社が合併した会社です。前の会社のイメージがすべて拭い去られるかといえばそうではありませんが、革新的に様々な施策を導入することにより、「キャリアの継続を通じて成長していく」ことに対する期待は高まっていると思います。また、社会からの評価は、社員に対して良いメッセージを発してくれます。中にいると分からないことがありますが、外部からの評価が、社員のモチベーションのアップにつながっている,相乗効果が得られているように思います。
 今回のように学生さんが弊社に話を聞いてみたいと思っていただけるのは大変ありがたいんです。こういう形で選んでもらえることは我々のモチベーションにつながっています。


【今後の課題】
―ありがとうございます。今後の課題はなんでしょうか
 課題として認識しているものは介護支援です。社員が介護問題をどのように抱えているか、社内での事例がまだ少ないことから、今後起きるであろう介護の問題に対して、今の制度で充足しているかどうか、検討していかなければならないと思っています。
 企業の中で、一人一人がキャリアを継続し、能力を発揮することによって個人が成長すると同時に、企業価値の持続的向上へとつながっていくことにより,社会的責任を果たしていきたいと考えています。そのためには、育児や介護などのライフイベントがきっかけでキャリアが途絶えてしまうことは避けなければならませんし、そのためにどうするか、常に考えながらやっていくことだと思っています。
 社員の要望に100パーセントこたえていくのは難しいですが、常に社員が何を望んでいるか会社として何ができるかということを考えながらやっています。


【政府、社会に求めること】
―最後に政府や社会に求めることはなんでしょうか
 インフラと意識改革です。
 インフラでは、まず、保育所が少なすぎることです。また、介護に対する社会的なインフラの整備はまだまだ充実していないと思われますので、国策として強く求めるところです。更に、不妊に対する保険適用の問題です。
もう一つは意識です。今まさに1986年の男女雇用機会均等法以降に入社した女性たちの社会進出が進み、高いポジションに就くようになってきています。加速度的に社会が変化し続ける時代において、学生時代からキャリア意識をどう高めていくのか、社会に出る前に自身のキャリアをどのように考えるのか、というのは重要です。働くことに対してどのような意識をもつかは個人の自由ですが、少子高齢化の状況にある今の日本においては、その意識は、まず教育の現場から高めていく必要があるのだろうと思います。やはりグローバルな競争力ということを考えると、日本の大学教育で、すぐに社会人として通用する職種とそうでない職種があります。海外では、大学での知識や能力を身につけた人材が社会で活躍する。そのような点でも、日本の国力としてグローバルな競争力があるのかどうなのかというところを真剣に考えていかないといけないのかなと思います。時間がかかることですが。


—貴重なお話をありがとうございました

【インタビューを終えて】
 「男性も女性も定年まで会社で能力を発揮し続けて欲しい」という強いメッセージが伝わってくるインタビューでした。私がとても共感できたことはプライベートの時間も充実させることが仕事の活力につながるということでした。育児・介護など何かキャリアの継続に妨げになることが発生した時、アステラス製薬株式会社の方達には継続できる制度環境が整っていると感じました。制度選択の幅が広く協力してもらえる職場環境があることで安心して仕事を続けられるのではないかと思いました。
 私がインタビューで印象に残ったことは意識改革、メンタルヘルス、男性の育児休暇取得者の三点でした。
 まず、一つ目の意識改革についてはFFdayがとても衝撃的でした。この施策の話を聞き一人ひとりの意識が重要であると改めて感じました。制度ができて初めて時間の使い方と向き合う人もいるのだと思いました。社員一人一人の意識が変わることでWLB施策は実現可能になるのだと感じました。
 二つ目はメンタルヘルスについてです。メンタルヘルスの支援について、私は今まで会社内でやるべきものと思っていました。しかし、インタビューを通して外部の機関と連携を取ることも大切であると感じました。会社で働く上で社員の方で自分が精神的に悩んでいることを会社に知られたくないと感じている人が多いのではないかと思います。私がその立場になったとしたらこれからの自分のキャリアへの影響、職場で一緒に働く人との関係を考えると、内部の方にはなかなか相談できないかもしれないと感じました。実際お話をうかがうことでメンタルヘルスといっても様々なアプローチができることが分かりました。
 三つ目は男性の育児休暇取得についてです。男性が一人でも育児休暇を取得することは、会社全体に大きな影響を与えるものなのだと感じました。一人の影響が広がり、次の利用者を生み出す力となることがわかりました。それと同時に最初の一人を出すことはとても大変なことなのではないかと感じました。
 会社で能力を100パーセント発揮してほしいという、人材を大切に思う気持ちが伝わってくるインタビューでした。その思いが社員一人一人の方にもつながり数々のWLB施策が成功しているのではないかと思いました。

【レポート作成者】  法政大学キャリアデザイン学部 武石恵美子ゼミ3年 戸嶋 友香

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