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株式会社ヒューマンシステム(大学生によるワークライフバランス推進企業への取材2009)


株式会社ヒューマンシステム

~ワークとライフのバランスを自己決定できるという株式会社ヒューマンシステム。2008年に「東京ワークライフバランス認定企業」に認定されています。管理統括部マネージャーの阪本直子様にお話を伺いました。また、後半には代表取締役湯野川恵美様においで頂き、経営者としてのお考えをお聞きしました~



【企業概要】

事業内容
 コンサルティング・ソリューションサービス、システムインテグレーション サービス、ビジネスソリューションサービス等
設立年
 1992年
従業員数
 111人(男性93人、女性18人)
平均労働時間
 男性195時間/月、女性184時間/月

まず、阪本直子様にワーク・ライフ・バランスの取組について伺いました。

【ワーク・ライフ・バランスの取組について】

―多様な勤務形態が可能ということですが、どのような取組をなさっているのか教えてください
 まず「週三日・四日勤務」があります。ライフスタイルは変化をしますよね。子どもが生まれたり、介護が必要になったり。そういったライフスタイルが変化したときには、時短勤務などによりワーク・ライフ・バランス(以下WLB)を自己決定できるというものです。
 育児休暇は、一般には、子どもが何歳までと決まっていたり、一回育児休暇を取ったらもうその子どもでは育児休暇は取れないなどいろいろ制限がありますが、当社ではそういった制限などは特に設けてはいません。
 育児休暇を取得して復帰したけれど、やっぱりもうちょっと休みたいですとか、フルタイムでの復帰はまだ無理かなと思った時にもう一度休みたい、といったこともあるので、取得回数の制限はつけていません。また、子どもが一歳半までなど利用期間が決まっているのが普通ですが、当社では特に期限も決めていません。

―週三日勤務についてですが、例えば今週は月火水に働いて、翌週は月水金に来る、など自由に設定できるのですか
 基本的にチーム単位で仕事をしているので、チームの仕事に支障をきたさなければ変えることは可能です。 私は週三日勤務で、月曜と木曜は専門学校で教えています。今日は木曜日なのですけれど、専門学校が終わってから来ました。今日出社したから明日の金曜日を休みにするなど、休む日を振り替えたりすることもできます。お客様とやりとりする、どうしても説明会などに出席しなければならない、というときには予定を変えなければいけないですよね。そういうときは変更もしています。
 当社はフレックス制度も取り入れているので、1日8時間勤務という計算で、例えば20日勤務の月には、月のトータルで160時間になればよいとしています。160時間を超えないように働くのですけれど、忙しい時や忙しくない時など波が激しい仕事なので、各自で調整をしながら仕事をしていますね。もし、160時間を超えてしまったら、そこから残業になります。
 これは、当社のヒューマンワークスというシステムで管理をしています。毎日出勤時間と退勤時間、そこで何時間どういう仕事をしたかなどを入力するようにしていて、自動的に計算されるようになっています。勤務時間や残業時間がトータルで出るようになっているだけでなく、プロジェクト管理や経費管理も同時にできるので、このシステムを使って時間管理を行っています。

―JOBチェンジが出来るようになるための教育研修というものがあるようですが、これはどういったものでしょうか
 時短勤務にすると、仕事の質や、できる仕事が変わってくることがあります。そうすると、JOBチェンジが必要なこともありますので、そのためのものです。例えば私も利用したのですが、育児休暇中に通信講座で資格取得ができるというものですね。この時の費用は会社が負担してくれました。
 また、短い時間で成果が上げられるようにする研修という面もあります。残業をして長くダラダラ仕事をするのではなく、効率を上げてさっさと仕事をしてさっさと帰る。効率を上げずに単に労働時間を短縮しても、会社が儲からなくて倒産してしまってワークがなくなったらライフも成り立たちません。短い時間で凝縮して仕事をして同じ成果を出した結果、早く帰れてライフも充実できるという考え方です。
 また、生産性の向上のために色々な教育をやっていますが、変わった研修としては、全社員集めてマンガ教材を使ったコミュニケーション研修を行っています。あるシステム会社で急なトラブルなど様々な問題が起きていく、というストーリーに対して、問題が起きたときは誰にどの順番で報告するとか、この中での問題点とか、そういったところをみんなで議論しあって、どうやって業務を進めていくかを考える研修内容です。

―こういった研修は外部の方を招いてやっていただいているんですか
 そうですね。当社の代表取締役が大学教授もしているので、その関係で、このマンガを監修されている方も含め2名の外部講師をお招きして、計3名の大学教授が100名の社員を30名くらいずつに分けて実施しました。毎年マンガの内容やテーマも違うので面白いですよ。

―成果に応じたボーナス制度というのはどのようなものですか
 これは先にお話したヒューマンワークスに「今日はこのプロジェクトで何時間こういう仕事をしました」と入力すると、そのプロジェクトの中で誰が何時間どういう工程の仕事をして、そのコストがどのくらいかかったかがわかる仕組みになっています。そうするとそのプロジェクトはメンバーがどれだけ時間を使い、経費がいくらかかって、最終的にどれだけ利益が出たかというのが全部出るようになっています。それにより、成果というものが出ますよね。その利益の一部は、プロジェクトの責任者(アカウントマネージャー)が自由に割り振っていいことになっています。普通は株主配当になる部分だと思いますが、当社は株主がほとんど社長と社員なので、貢献度に合わせてボーナスを配分支給するという考え方です。

―金額の幅もあるのでしょうか
 そうです。幅は大きいですね。100万単位で差が出てきます。


【WLB取組の効果】
―お話を伺っていると、働いている人と会社の話し合いが密になされていて、その人の事情に合わせて働き方の調整ができているようですが。なぜ、それが可能なのでしょうか
 それは…社長の人柄かな。いい人なんです。

―中堅企業だからやりやすいという部分はありますか
 それはありますね。さらに株主が社長と社員だから、社長と社員の幸せのために働ける。株主が他にいると株主の利益のために働かなければいけないですよね。

―WLBに取り組んでみて効果はありましたか
 WLBを図ろうと思ったら、その人でなければできない仕事があってはいけないんです。そういう仕事があると、その人はその仕事に縛られてしまいます。ですから、自分の仕事の情報を公開して個人プレーからチームプレーに移行しなければいけない。
 そのためにまず「仕事の見える化」が必要です。情報を共有して各人の業務についてのマニュアルをつくる。そうすれば会社としても安心ですね。その人が休んでも誰かに代わってもらえるし、「帰っても大丈夫ですよ」と言えるし、本人も安心して休める。そして、お客様も安心ですよね。サポート体制がきちんとしていれば、お客様も安心で品質の高いサービスがいつでも受けられるということです。そういうメリットがあります。
 もうひとつは出産・育児・介護や障壁があっても、能力や仕事への熱意がある、やる気のある人に活躍の場を与えることができます。家のことを心配して仕事をするより、効率的に仕事をして家に帰る方が生産性も上がります。 また、採用面でもメリットがあります。学生さんに対して、WLBに取り組んでるというアピールになります。今年のエントリーは去年の2.2倍になりました。不況の中でエントリー数は増えているということですが、他社の平均は大体1.6倍なんです。東京WLB認定企業になったということが、2.2倍に増えた要因の一つといえます。

―取組の理由として、優秀な人材の流失を防ぐというものがありますが、実際はどうでしょうか
 そうですね。様々な制度がなかったら私も辞めざるを得なかったです。
 私は2人の子育てをしており、1人目が生まれたあと復帰はしたのですが、また直ぐに妊娠をして休暇に入りました。子育てをしながら働いていますが、家事をしっかりやらないで、子どもの教育も行き届かないようだと本末転倒だと思います。でも週に三日くらいなら続けていけるかなと思って、時短勤務を利用しています。フルタイムで働くのであれば、退職せざるを得なかったと思います。本当にこういう制度があるから続けていけるのだと思っています。


【今後について】
―国や政府に求めることはありますか
 私の娘は4月になるまで保育園に入れなかったので、復帰するためには義母にお願いせざるを得ませんでした。それで、社長に相談したら、おばあちゃんにも保育料出してあげるよ!と言われました。それで保育料を出してもらって私も会社に出て来られて、会社としても早く復帰してもらってという、win-win-winの関係で保育園入園まで乗り切ることができました。そうしてもらったんですけど、本当は安心して子どもを預けられる施設をちゃんと作ってほしいです。
 保育園と幼稚園は随分違うんです。幼稚園だと教育を重視していますが、保育園は安全に遊ぶという感じです。教育を受けるために幼稚園に入れるには仕事を辞めないといけないことになってしまうので、保育園でも教育を充実してほしいですね。

―今後強化したいことはありますか
 そうですね、「くるみん」認定を取りたいと思っています。
 「くるみん」は目標設定をしてそれを実現できれば取得ができるのですが、もう既に高い水準で取り組んでいる企業にとってはハードルが高いです。当社はもうハードルを上げてしまったような状況なので、新たにこれ以上なにができるだろう、と探しています。ハードルが高くなっている分、かなり工夫しないと、「くるみん」を取るのは難しいです。

―それでは今後の課題があればお聞かせ下さい
 「正しい目標管理とコスト意識です。WLB自体が目標ではなくて、それにより利益やコスト削減につながらないと意味がない。そのためには目標管理とコスト意識、そしてその上での自己実現。そのバランスを考えていかないといけないというのが一つの課題です。
 それと、言語化した分かりやすいルール作りが必要だと思います。それができていないと「なあなあ」になってしまいます。特に裁量労働や時短勤務をしている人とそうでない人と差ができて、なぜあの人だけ、となりがち。今までは社長の一声で決まっていた面もありますが、それでは組織として成り立たないので、分かりやすいルールが必要ですね。
 それから成果をあげるということ。チームで最高のパフォーマンスを上げられるような組織作りができればよいと思います。それが最終的に組織全体の成果につながるということです。

―貴重なお話、ありがとうございました

代表取締役湯野川恵美様にお聞きしました。

【経営者にとってのWLBの取組】

―WLBに取り組むようになったきっかけはありますか
 そもそも会社を作ったきっかけが、前の社長が急にいなくなったことなんです。ですから、いる人を大切にしようって思いが強かったんです。WLBという前に、働いてる人を大切にしよう、という思いが強い会社でしたね。

―WLBについてはどのようにお考えですか
 WLBというのはそれだけを考えていてもだめなんですよ。経営そのものなんです。価値観をどう捉えるかなんです。だから、時間をお金に換えてるという考え方から脱しないといけないのではないでしょうか。
 時間は重要です。重要なのですが、その時間をお金に換えるということではなくて、成果を評価してもらってお金を頂くって考え方にならないと、だめなのではないでしょうか。我々はどちらかというとものを作る仕事です。今は時間で雇われているという感覚が強いのでしょう。月に何百時間で契約しましょうという形ですね。それが、これからはどういうサービスが提供できるの、という契約の考え方になると思います。

―量より質ということですか
 成果、やる内容ですね。当社では付加価値と言っています。
 付加価値というといろいろな意味が含まれるように考えるかもしれませんが、そうではなくて、お客様のビジネスの価値を上げていくそのもの、利益に繋がるものをどう生み出していくかというのが、我々が働くということではないでしょうか。
 時間で勝負する仕事もあるとは思います。でも、我々の仕事は時間で勝負する仕事ではない。そもそも勤務形態がどうであろうと、コミュニュケーションがとれてチームで成果が出せれば良い。ポイントは、どうやって付加価値を生み出していくかという時に、時間で縛りつけていてなにか生産性が上がるのかということです。
 ただ、仕事が忙しい時というのはあります。突発的なことでどうしてもその人ではないとできないということがあるかもしれない。だからなるべくその人でないと困ってしまうという状況を作らないようにします。その人が帰ってしまっても電話でも対応できるように一人ひとりのスキルをあげる。
 「今日は妻が残業なので帰ります」とか、そういうことを容認していく社会でないとあまり良い社会にはならないと思いますし、その人がどんな成果をあげているかを評価することが大事だと思います。そのためには、一人ひとりの能力を上げること、熱意を持って仕事に取り組むこと、そしてその二つが同じ方向を向くことが重要です。そこの価値観が違ってしまうといけませんね。
 そうするとWLBというものはおそらく経営の考え方で、経営の中に組み込まれた形でないと存在しないのではないか、と思います。

―WLBの取組ばかり見ていてもだめということですね
 我々中堅企業が優秀な人を採ろうと思ったら、なにかしら特徴がないとだめですよね。
 大企業に行けば同じように優秀な人が何百人といます。その中で競争をして勝っていこうと考えている人に対してWLBと言ったって全然興味ないかもしれないですよね。だから、そういう生き方も別にいいし、そんなに優秀じゃなくても頑張って生きている人も認められるし、家族のために働いている人も認められるし、という会社がいいと思います。
 一方で隙間を埋める人がいるのは確かです。その隙間を埋めいてくところが高い付加価値であり、技術力がないとできないので、それを埋めようとする人は高い技術力がつく。けれども、それが残業をしながら長時間働いている人が埋めてるかと言うと、必ずしもそうではないんです。それぞれに頑張れる能力というのがあります。能力というのは高い人とそうではない人がいますね。だから、時間ではなく成果というものを平等に見る、そういうことをきちんとする必要があります。

―中堅企業だからこそ、それぞれの事情に対応できる体制ができていると感じるのですが
 その理由は、考え方を揃えるというのが大企業と中堅企業で違うからですね。
 大企業で働くには、激しい競争を勝ち抜いていかざるを得ないんです。その中でだんだん一生懸命になってしまい、競争の中でWLBが崩れてしまうのも仕方ないと思います。
 株式を公開している会社なら会社の利益を上げるというのが株主に対しての責任ですよね。当社は株主というのは私であり社員であります。外部株主はある新聞社さんだけです。そういう比較的恵まれた環境にあるので、ある意味柔軟な体制ができているというところはあると思います。
 だからって無責任ではいけないですよね。お客様の満足と従業員の幸せを両立するというのが当社の企業理念です。

―最後に今後の展望、目標、課題を教えてください
 我々は今、技術をサービスに変えていくことが必要だと思っています。これまでは、ものを作ることでしたよね。それがクラウドコンピューティング※などいろいろ出てきて、ものをつくるだけの技術だけでは生きていけなくなりました。そうするとやはりサービスを提供することになりますよね。
 「技術」「思いやり」「豊かな人間性」というのが社是なんですが、技術と思いやりを育むためには豊かな人間性を育まないとだめだねという考え方があります。そんな中、サービスというのは技術と思いやりが必要ですね。
 一つの経験から多くを学べる人とそうでない人の違いというのは、思いやりの違いだと思うのですが、それができるかできないかというのはどう人間性を豊かにしていくかだと思うんです。人に会うとか勉強するとか、そうして豊かな人間性を育んでいると、なにかの時に直観力が働きます。なにかを思いつくとか。思いつくだけではなくコミュニケーションがうまく取れるきっかけになります。そういうきっかけがあればお客様の話もより深く聞くことができますね。そうすれば短い時間で仕事ができて、お客様にも喜んでもらえる。
 今後はそういったサービスを追及した会社になっていって、ITを使ってお客様の課題解決をするということを仕事として、これからもうちの会社で働く人が幸せになればいいなと思います。


―本日は貴重なお話をどうもありがとうございました


【インタビューを終えて】
 ヒューマンシステムでは「成果を評価する」という考え方がしっかり浸透しているという印象を受けました。成果といっても企業側が一方的に求めるようなものではなく、働く人が効率良く仕事を進め、お客様を満足させるという、企業の利益と人の温かみを持ち合わせたものでした。
 お話を聞かせて下さったお二人が仰っていたことで印象に残ったのが、「その人でなければいけない仕事があってはいけない」ということです。WLBを進める上では、仕事に対しての根本的な考え方の転換が必要だと感じると同時に、このように、考え方を共有することができるという点が中堅企業の大きな強みであると思いました。
 また、WLBはそれ単独で機能するわけではなく、経営そのものである、というお話も非常に印象的でした。WLBを特別視するわけでなく、働く人を大切にするという考えのもとでの経営の一つの柱という位置づけがとても自然に感じられました。こうしたWLBを特別視し過ぎない姿勢、が働く人にとって「それがもともとあったので当然のもの」と受け止められている理由ではないかと思います。そして、WLBというのは企業がそれぞれに行うだけでなく、働く人の「仕事」に対する意識が社会全体で、人それぞれの多様性・事情を容認していくことが大切であると感じました。

※クラウドコンピューティング
従来はパッケージで購入したワープロや表計算などのアプリケーションソフトを自分のパソコンにインストールして利用していたが、これをすべてインターネットに接続して利用する仕組み。「クラウド」は「雲」を意味し、インターネットを表現するのに「雲の形」にたとえることに由来している。(Japan Knowledgeより引用)

【レポート作成者】  法政大学キャリアデザイン学部 武石恵美子ゼミ3年 木下なお

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